君と出会う
十代の頃、歩いて日本を一周した。
10年後、もう一度、同じ道をたどり、再び歩いて日本一周の旅をした。
毎日、毎日ただ、歩き続け、
たくさんのものに触れ、風を感じ、様々な空気を実感し、
多くの人たちに出会った。
一瞬の出会い、通りすがりの出会い、楽しき出会い、
そして、数え切れないくらいの暖かさに触れた。
それからも、わたしは、旅を続けた。
世界中を旅した。
ヒッチハイクをして、ある時は自転車で。
世界を旅した時、
その地で出会った人たちと、ゆるりと酒を酌み交わす時間が
わたしの最も好ましいひとときでもあった。
日本を離れて、日本を知った。
世界の様々な土地に生き、暮らしてみた。
言葉の行き違い、思いもよらない慣習、理不尽な対応、
されど、出会えることの感動とあたたかさが、何にもまして、わたしは大好きだった。
多くの国を旅して、はじめて、わたしは日本らしさの大切さを痛感した。
神戸大震災の時に、自ら経験したボランティア、
すさまじい状態での、苦しい活動の中でふれあった出会いがあった。
その出会いは、何年かのち、わたしの困難を救ってくれる出会いとなった
京都で「一見さんお断り」のこの宿は、わたしを待っていた。
わたしが、この宿を残していきたい、
いや、残さなければならないという使命感のようなものを感じた。
京都の高級旅館としての品格、品質をもつ、この貴重な建物を
たくさんの人に体感してもらえる出会いの場にしたい、と思った。
だから、どの季節にも、--京都が桜や紅葉でにぎわう時にも、普通の時にも、
同じ料金でお泊まりいただくことにした。
そして、たくさんの出会いをつくるために、
「一見さん」が泊まれる、片泊まりの宿 --せいしん庵-- とした。
子供に出会い、子供に残したい。
京都に出会い、京都を残したい。
今、この宿の庵主として
日々、出会えることの道のりに、新たな困難もあり
また、それ以上の新たなる楽しい感動にも触れている。
気持ちは ひとつ。
同じあたたかさで この宿に泊まっていただけたら、うれしい。
わたしが、多くの国を旅した時のように、
自由に この宿に立ち寄ってもらえたら、うれしい。
ほんものの京都、日本の純粋さ、すばらしきもの ・・・
そして また 君と 出会う